冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
考えてみれば彼の年齢と社会的地位から考えて、そのような縁談がなかったはずがない。慎重に選んでいたという日奈子の予想はあたっていたが、まったく理由は違っていた。

「だけど俺は迷うことなく断った。祖母が生きていてもそうしろと言っただろう。そして俺が日奈子を心から愛し一緒になりたいと願ったなら、そうしろと言ったはずだ」
 
その言葉は間違いないと日奈子は思う。胸に抱えていた重いものが、ひとつ、消えてなくなるのを感じていた。

残るひとつ、母の願いも乗り越えられると確信する。母の願いは富美子から受けた恩に報いることだけなのだから。

「宗くん、私ね……」
 
決意を込めて日奈子が口を開きかけた時——。
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