冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
コンコンと、運転席のウィンドウガラスを叩く音がして口を閉じる。

「すみません」
 
見知らぬ男性が宗一郎を呼びかけている。
 
警戒し、すぐに答えない宗一郎に、ガラスの向こうでまた口を開く。

「失礼します、九条宗一郎さんですよね。私こういう者ですが。モデルの美鈴さんとの件でお伺いしたいことがありまして」
 
そう言って名刺をこちらに見えるように出している。週刊誌の記者のようだ。

「日奈子、マンションへ入れ。エントランスまで送っていく」
 
低い声でそう言って、記者に離れてくれと合図を送ってから、ドアを開けて外へ出た。
 
日奈子も彼にならって外へ出る。
 
すかさず口を開きかける記者を止める。

「少しお待ちいただけますか。きちんとお答えしますので」
 
そしてマンションのエントランスまで日奈子と一緒に来てくれた。
 
記者は車のところで、待っている。彼に聞こえないような声のボリュームで宗一郎が謝った。

「日奈子、ごめん。話の続きはまた今度」

「うん……。だけど大丈夫?」

「ああ、思っていたよりも早く来たが、想定してなかったわけじゃないから、大丈夫だ。……だがこの後本社へ戻り対応する必要があるから、場合によってはそのまましばらく会いに来られなくなるかもしれない」
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