冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
マネージャーと一緒に日奈子が部屋を出ようとすると、美鈴が日奈子を呼び止めた。

「待って、鈴木さん。あなたには話があるから、ここに残ってほしいの」
 
その言葉に頷いてマネージャーの案内は別のスタッフに任せて、日奈子は部屋に残る。

「そこに座ってくれる?」
 
促されるままに、美鈴と反対側のソファに座ると、すぐに彼女は口を開いた。

「すごくお世話なったのに最後はこんなことになってごめんなさい。迷惑かけちゃった」
 
そう言う彼女はどこか元気がないように見えた。日奈子首を横に振った。

「大丈夫です。お客さまおひとりおひとりの事情に合わせて快適にお過ごしいただけるよう心配りさせていただくのが私どもの仕事ですから」

「だけど宗一郎にも、余計な手間をかけさせてしまった。あなただって無関係ではないでしょう? ここまでの騒ぎになったのは私の失敗だし。最後の最後に、足元を掬われちゃった」
 
そう言って苦しげに眉を寄せた。
 
週刊誌が熱愛を報じたきっかけは、彼女がごく近しい人数人に『近々結婚する』と報告したからだ。

信頼できる相手だと思ったからこそ報告したのだろうが、その内の誰かから情報が漏れたということになる。そのことに気落ちしているようだった。
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