冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
そして自分の心に正直に信じる道を真っ直ぐに進むその姿に、日奈子は背中を押されたような気分だった。
 
宗一郎と共に生きるという決断は揺らがない。
 
冷たい夜の空気に、白い息を吐いて日奈子は宗一郎を思い浮かべる。会いたくてたまらなかった。
 
今胸の中にある熱い想い。あなたと人生を歩みたいのだという願いを、早く聞いてほしかった。

ずっとずっとそばにいて日奈子のことを大切に想い、待っていてくれた彼に、一秒でも早く……。
 
とはいえ、日奈子の方から会いにいくわけにはいかないから、待っているしかないのがもどかしいった。
 
美鈴が出国したのを期に、少し状況は変わるはずだけれど……。
 
そんなことを考えながら、通りを駅の方向へ曲がろうとした時。

「すみません、鈴木日奈子さんですよね?」
 
突然植え込みの影から現れた人物に声をかけられ、びくりと肩を震わせる。

振り返ると、声をかけたと思しき男性はすぐに名乗る。

「週刊リアルの早川(はやかわ)と申します。鈴木日奈子さんですよね? 九条副社長との関係についてお話をお伺いしたいのですが」
 
その言葉に日奈子は思わず足を止めた。
 
職場からはどのような取材も、すべて無視するようにと厳命されている。
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