冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
記者とともに日奈子もそれを確認する。イタリア人と思しき男性と幸せそうに寄り添う美鈴の写真が写し出されている。

オリーブ農家の彼と結婚するという報告の言葉が添えられている。
 
記者が啞然として口を開く。

「これは……い、いつ……?」

「三分前にアップされた。同時に、美鈴のエージェントからも公式コメントが発表されている。本人のSNSにある通り彼女はイタリア人男性と近々結婚予定で、俺との関係は友人あるいはビジネス上のものにすぎないとね。婚約情報はまったくの事実無根だから、これ以後の報道は、訴訟対応するという警告つきだ」

「なっ……!」
 
記者が絶句して画面を凝視している。

「ちなみに我が社も同じ内容の公式コメントを出している。……もちろん、警告つきの」
 
そう言って宗一郎は、彼を睨む。
 
鋭い視線と言葉に、記者が圧倒されたように一歩下がり、慌てたように頭を下げて足早に立ち去った。
 
遠ざかる背中を忌々しげに見て、宗一郎が息を吐いた。

「これでようやく、静かになるな」
 
そして日奈子に向き直る。

「日奈子、これでわかっただろう。俺が口うるさくタクシーを使えと言っていたわけが」
 
咎めるように自分を見つめる視線といつもの小言に、日奈子はたまらなくなって、彼の胸に飛び込むように抱きついた。
< 163 / 201 >

この作品をシェア

pagetop