冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「その話は興味深いが、今の俺には少しつらい」
 
言葉の意味を理解できず日奈子は首を傾げる。宗一郎が日奈子の耳に、唇を寄せて囁いた。

「日奈子ははじめてなのに、優しく抱いてやれなくなる」
 
日奈子の胸がドキンと大きな音を立てる。すぐ近くで自分を見つめる彼の瞳は、どこか獰猛な色を浮かべている。

「俺は日奈子に少しの苦痛も与えたくないんだ。だからその話は、また今度聞くよ」
 
彼はそう囁いて日奈子をふわりと抱き上げて、自分のベッドへ連れていく。
 
少し冷たいシーツの上にまるで宝物を置くかのように、そっと優しく寝かされる。
 
日奈子をまたぎ膝立ちになった宗一郎が、額にかかる湿った髪を払いのける。

仕事中は、キチンとなでつけられている彼の髪が今は少し乱れている。いつも完璧で手を抜かない彼の、誰も知らない姿だ。
 
なんだかたまらなくなってしまって、考えるより先に言葉が口から出てしまう。

「仕事中の宗くんも好き。すごくカッコいい。スーツ姿なのに、ロビーに入った瞬間からホテルマンになるの一流だと思う。私もいつかは宗くんみたいになホテルスタッフになるんだって決めてるの。まだまだ未熟だけど……んっ!」
 
思うままに、宗一郎への気持ちを口にする日奈子の口は、熱いキスで塞がれる。
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