冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
尋ねると彼は頷いて、まずは日奈子にミネラルウォーターのグラスを握らせる。
 
ごくごく飲むと、身体に染み渡るよううておいしかった。

「疲れているだろうから、今日は一日寝ててもいいぞ」

「一日って……」

「結局昨夜は優しくできなかったな」
 
少し申し訳なさそうな表情で日奈子の頬にそっと触れる。その感覚に、日奈子の頬が熱くなる。

彼が昨夜のベッドの上で起こったことを言っているのだと気がついたからだ。

「日奈子は、はじめてだったのに、随分無理をさせてしまった。自分でもやりすぎたと……」

「だ、大丈夫……! 大丈夫だから!」
 
慌てて日奈子は彼の言葉を遮った。
 
このままだと、彼が昨夜の出来事を口にしてしまう。
 
昨夜彼は、このベッドで今までの想いをぶつけるように情熱的に何度も何度も日奈子を求めた。

正直なところ、はじめてにしてはややハードだったと経験のない日奈子でもわかる。でも優しくなかったということはない。
 
彼は日奈子に少しも苦痛を与えたくないと言った言葉の通り、はじめての出来事にいちいち戸惑う日奈子の心と身体を丁寧にほぐしていった。

つらいことも怖いことも少しもない幸せな時間だったことは間違いない。
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