冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
経営には関わっていないとはいえ、敬子は社長夫人なのだ。あたふたするのも無理はない。

「で、では、このお時間はご家族でお過ごしくださいませ」
 
どこかぎくしゃくとしながらそう言って部屋を出ていった。
 
入れ替わるように宗一郎が入ってきた。彼も支度が終わったようだ。黒のモーニングコートを身につけいる。

「宗くん、お疲れさま」
 
日奈子が声をかけるとその場でわずかに頷くが、すぐにこちらへやって来ずに、ジッと日奈子を見つめている。

「ひなちゃんがあまりにも可愛いんで言葉を失ってるな」
 
宗介がニヤニヤとした。
 
宗一郎はうるさそうに彼を見て、咳払いをしてからこちらへやってきた。

「日奈子も、お疲れさま。だがここからもっと疲れるだろう。……堅苦しい思いをする。全部俺の都合だ。ごめんな」

「私は大丈夫。緊張はするけど……。宗くんの妻として恥ずかしくないように頑張るね」

「なにも頑張る必要はないそのままでいいよ。だけど疲れたらすぐに言え。式の途中でもいいから」

隣で敬子がふふふと笑いながら呟いた。

「相変わらずひなちゃんしか目に入っていないようね」
 
その言葉に日奈子は頬を染めた。
 
九条夫妻への結婚の報告は宗一郎と日奈子でした。

ふたりは驚きまずはそれが日奈子の本心かどうかを気にかけてくれた。

九条家で敬子がふたりが結婚したらいいと口走ったことに日奈子が気を遣ったのではないかと心配したようだ。
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