冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「昨日の夜に思い出したんだもの。で、お父さんとこれだけは言っておかなきゃねって話になったのよ」

「だけど……」

「宗くん、私大丈夫」
 
日奈子は宗一郎を遮った。
 
本来は一緒になることを許されないはずのふたりなのだ。

それを認めてもらうために必要なことならば、どんなことだとしても大丈夫。もう日奈子は宗一郎と一緒でなくては生きていけないのだから。

「聞かせてください。お義母さん」
 
決意を込めて日奈子が言うと、敬子がにっこりと笑った。

「ひなちゃんは、私たちの娘です。それは宗一郎と結婚したからではありません。ずっと私たちは、ひなちゃんを娘と思ってきたんだもの。例えば将来、ひなちゃんが宗一郎と別れるなんてことになっても、私たちとの関係は変わらないと約束してちょうだい。ひなちゃんの実家は、ずっと九条家(うち)よ」
 
敬子の隣で宗介もうんうんと頷いている。ふたりの優しい眼差しは、ありし日の母とまったく同じだった。
 
日奈子の視界がじわりと滲む。
 
別れるなんてことはありえないけれど、万が一のことがあっても日奈子の居場所がなくならないようにふたりはこう言ってくれている。

「ありがとうございます」
 
ティッシュで涙を拭って日奈子は言う。
 
宗一郎が、安堵したように息を吐いた。

「そんなことには、ならないけどな」

「あら、あなたはそうでしょうけど、ひなちゃんの方はわからないわよ? その過保護すぎるところ、少し考えないと」

「過保護って、このくらいは普通だろう」

「だからその感覚が……」
 
相変わらずのふたりのやり取りに日奈子は笑みを浮かべて口を挟む。
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