冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
莉子がはぁ〜とため息をついた。

「その薄い反応……。日奈子って理想が高いんだ」

「そんなことないよ。素敵な人だったと思う」
 
慌てて答えながら、内心でどきりとした。自分の中に理想の男性像があるとすれば、間違いなく宗一郎だ。

皆がいいと言う男性にいまひとつ興味がわかないのは、完璧な宗一郎と一緒にいるうちに知らず知らずのうちに理想が高くなってしまっているのだろうか。

だとしたら、彼以外の人と新しい恋愛をするなんてハードルの高いことなのかもしれない。

「でもまだちょっと話をしただけだからわかんないよ」

日奈子が曖昧に言うと、莉子は納得した。

「ま、それもそうか。一度話しただけじゃわからないもんね」
 
それからふたりで席へ戻る。しばらくするとお開きになった。

会計を済ませて店を出ると広い歩道端に固まり、それぞれ連絡先を交換しはじめる。なんとなく日奈子は、莉子の袖を引いた。

「莉子、私帰るね。駅、皆と違う方向だし」
 
莉子は一瞬渋い表情になったが、すぐに気を取り直したように納得した。

「まぁ、今日は参加してくれただけでも上出来か。バイバイ、気をつけて」

「うん、ありがとう。おつかれさまでした」
 
最後のひと言は誰ともなしに声をかけて、日奈子は夜の街を歩き出した。
 
地下鉄の駅を目指しながら浮かない気持ちで日奈子は考えを巡らせる。
 
まずは一歩踏みだした。が、好発進とは言えないのだろう。
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