冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～

こうやって出会う機会を増やせばいつかは宗一郎を忘れるくらいの男性が現れるのだろうか……。
「鈴木さん」
　
後ろから声をかけられて、日奈子は足を止めて振り返る。さっき莉子との会話で話題に出た高木だった。

「駅まで送るよ」
　
爽やかに言って日奈子の隣までやってきた。

「え、でも高木さん。反対方向じゃ……」
　
さっき店の前で皆で確認した時の彼の帰る方向とは真逆だ。

「大丈夫、女の子をひとりで帰らせるわけにはいかないからね」

「でも……」
　
人通りもありますし、と言いかけて口を閉じた。さっき莉子と話したことが頭に浮かんだ。

『日奈子って理想が高いんだ』

『一度話しただけじゃわからない』
　
たった数時間一緒に過ごしただけで決めつけるのはよくないのかもしれない。

「じゃあ……、お願いします」
　
日奈子が言うと、彼はにっこりとして歩調を合わせて歩きだした。

「明日は仕事？」

「いえ、明日は休みです」

「そうなんだ。大丈夫？　飲み過ぎてない？」

「はい」