冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
『ひなちゃんさえよければ、このまま家の養子になってもらって家から嫁にだしましょう。あなた、いい縁談を探してきてね』

『うーむ。その話には賛成だが、ひなちゃんを任せる相手なら相当慎重に選ばなくてはならないからな……』
 
人のいい両親らしい内容だが、それに宗一郎は、強い拒否感を抱いた。

日奈子が自分ではない男と、生涯を共にするなど絶対にあり得ない話だ。彼女の隣にいるのは自分であるべきだという強い想いが胸を貫いた。
 
——自分は日奈子を女性として愛している。
 
いや愛しているという言葉では言い表せないほど深く大切に思っている。
 
とりあえず宗一郎は、"今はまだその時ではない。

彼女を混乱させないためにその話は自分がいいというまでは待て"と両親に告げて、思いとどまらせた。
 
そして慎重に彼女を見守ってきた……。
 
ホテル九条本社ビルからほど近い自宅マンションの地下駐車場に着き、宗一郎は車を降りる。

高層階専用エレベーターに続くドアに鍵をかざすと静かに扉が開いた。

自分はともかく日奈子もこのくらいセキュリティの高いマンションに住んでほしいと切に願う。ひとり暮らしをしているだけでも心配だというのに。
 
彼女が九条家を出たのは、もちろん九条家で働いていた母親が亡くなったからだろう。雇用関係のない自分が屋敷に住むべきではないと言っていた。
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