冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
なにもしないでひとりでいると否が応でも、"もう母はいない、これからはずっとひとりで生きていかなくてはならない"と思い知らされるからだ。
だったらなにか趣味を見つけて、どこかへ出かければいいじゃないかと思うけれど、なにもする気になれないのだからどうしようもなかった。
ホテル九条は、業界内で従業員の職場環境がトップクラスと言われている。
宗一郎が副社長に就任してからは、従業員の有休消化率は九十パーセントを超え、離職率は大幅に減少した。
それは日奈子の誇りでもあるけれど、しっかり休みを取れることだけは、ありがたいと思えない。日奈子にとってはずっと働いている方が楽だからだ。
「予定がないなら、俺が一緒にいてもいいか?」
宗一郎が尋ねる。
「それは……」と言って日奈子は口ごもった。
本当なら断るべきだとわかっている。なんならそのまま昨夜の話はなしにするとも告げるべきだ。
でもそうして彼を追い返してしまったら、日奈子は今日一日、この部屋で孤独でつらい時間を過ごさなくてはならなくなる。
興味のないネットニュースや雑誌を何時間もぼんやりと眺め、ただ日が沈むのを待つだけだ。
彼をジッと見つめたまま日奈子は沈黙する。
それを、宗一郎は別の角度から捉えたようだ。ふっと笑って口を開いた。
「大丈夫、なにもしないよ」
言葉の意味が、いまひとつ理解できずすぐに反応できないでいると、宗一郎が安心させるように微笑んだ。
「日奈子が俺を男として見られるまで、手は出さない」
だったらなにか趣味を見つけて、どこかへ出かければいいじゃないかと思うけれど、なにもする気になれないのだからどうしようもなかった。
ホテル九条は、業界内で従業員の職場環境がトップクラスと言われている。
宗一郎が副社長に就任してからは、従業員の有休消化率は九十パーセントを超え、離職率は大幅に減少した。
それは日奈子の誇りでもあるけれど、しっかり休みを取れることだけは、ありがたいと思えない。日奈子にとってはずっと働いている方が楽だからだ。
「予定がないなら、俺が一緒にいてもいいか?」
宗一郎が尋ねる。
「それは……」と言って日奈子は口ごもった。
本当なら断るべきだとわかっている。なんならそのまま昨夜の話はなしにするとも告げるべきだ。
でもそうして彼を追い返してしまったら、日奈子は今日一日、この部屋で孤独でつらい時間を過ごさなくてはならなくなる。
興味のないネットニュースや雑誌を何時間もぼんやりと眺め、ただ日が沈むのを待つだけだ。
彼をジッと見つめたまま日奈子は沈黙する。
それを、宗一郎は別の角度から捉えたようだ。ふっと笑って口を開いた。
「大丈夫、なにもしないよ」
言葉の意味が、いまひとつ理解できずすぐに反応できないでいると、宗一郎が安心させるように微笑んだ。
「日奈子が俺を男として見られるまで、手は出さない」