冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「聞いたよ、チーフやばかったらしいじゃん」
 
午後十時半、勤務を終えてロッカールームで着替えようとしていた日奈子は、声をかけられて振り返る。同じく勤務を終えた莉子だった。

「連勤を強要したのがバレちゃったんだって? よりによって副社長に。日奈子現場にいたんでしょ?」

「うん」
 
日奈子はボタンを外しながら頷いた。
 
莉子は男性スタッフがキャスターをぶつけたところは見ていたが、その後の成り行きは知らないから勤務後さっそく事務所にいた他の同僚に確認したのだろう。

「ひゃー! スカッとする〜! 連勤はダメだって私たちが言っても全然聞く耳持たなかったもんね。タイムカードの改ざんまでしてさぁ。しかも、山下さんの話だと辞めたふたりについてもマネージャーたちに聞き取りがあったみたいよ。あの噂バッチリ報告したってさ」
 
今月に入って女性スタッフふたりが相次いで退職したのは、チーフが関わっていると噂されている。

ふたりとも彼と恋人関係にあった……早い話が二股をかけられていたというわけだ。しかもチーフは京都に妻子がいるというひどい話だった。
 
自分以外にも女がいてしかも同じ職場だったと知った女性たちは揉めに揉めて、結局ふたりとも辞めていった。
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