冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
宗一郎と手を繋ぐのが嫌なわけがないけれど、でもこんな風に男性と手を繋いで街を歩いたことなどない日奈子には刺激の強すぎることだった。

「だって、手は出さないって言ったのに……」
 
もごもご言うと、宗一郎がくっくと肩を揺らして笑い出した。

「手を繋ぐくらい"手を出す"うちに入らないだろう」 
「なっ……!」

「日奈子、"手を出す"の意味わかってるのか?」
 
からかうように言う宗一郎に日奈子は頬を膨らませた。

「わ、わかってるよ! 今はちょっといきなりだったから、びっくりしただけ」
 
慌てて日奈子は言い訳をする。手を繋ぐことが手を出すうちに入らないとは意外だが。

「公園の方は人通りが多くなるから離れないようにと思ったんだ。日奈子、楽しいものを見るとすぐにふらふら離れていって迷子になるから。だけどどうしても慣れないならもちろん離すよ。約束を破って"手を出した"と思われるのは困るし」
 
まるで小さな子供を相手にしてるように宗一郎が言う。
 
日奈子は少しムキになって口を開いた。

「やっぱりこのくらいは大丈夫。宗くんと手を繋ぐなんてべつにはじめてじゃないし」
 
そう言って歩き出すと、宗一郎が「そう?」楽しげに笑って歩き出した。
< 71 / 201 >

この作品をシェア

pagetop