冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
食事を終えると、手作りマーケットを散策する。

「行こうか」
 
宗一郎は当然のようにまた手を繋いだ。
 
その温もりに、日奈子の胸はトクンと跳ねる。

彼の気持ちに応えることはできないのに曖昧な態度はよくないという考えがチラリと頭を掠めるが、頭の隅に追いやった。マーケットは人でごった返している、はぐれないようにこうしているだけと、言い訳をして。
 
ずらりと並ぶブースには、それぞれの出品者が心を込めて作ったであろう品が思い思いに並べられている。

かつて自分も出品した時のことを思い出して日奈子の胸は弾んだ。
 
同時に、私もまたやりたいという気分になる。これも、随分久しぶりのことだった。
 
隣を歩く宗一郎を盗み見ると、彼はブースを珍しそうに眺めている。
 
浮き立つようなこの気持ちが彼のそばにいるということに関係しているのは間違いない。大好きな人のそばにいる、

彼に愛されている、そのことに心が動かされているのだ。

「どうかした?」
 
日奈子の視線に気がついた宗一郎が問いかける。
 
慌てて日奈子は被りを振った。

「う、ううん、なんでもない」

そして見つめていたことをごまかすように視線さまよわせ、あるブースが目に留めた。

「宗くん、あそこ、羊毛フェルトの店だ」
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