冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～
「じゃ、俺が出ていったらすぐに鍵を閉めるんだぞ」
　
日奈子のマンションの玄関で、靴を履いて振り返り宗一郎が微笑んだ。日奈子はそれを少し心細い思いで見つめている。
　
ふたりで過ごした休日が終わろうとしている。
　
結局ふたりは午後いっぱいをあの公園で過ごした。

ハンドメイドマーケットをくまなく見て回ったあと、キッチンワゴンで買ったアイスクリームを食べて、ストリートミュージシャンのパフォーマンスを眺めて。

日が傾いてから、ようやく帰ることにしたのである。
　
夕食は、家で食べることにして、日奈子が作った簡単なものをふたりで食べた。そして宗一郎が帰る時間になったのだ。

「宗くん、明日仕事だもんね」
　
日奈子の口から思わずそんな言葉が出る。いつもなら、長く感じる休日があっという間だったのは、彼と過ごしたからに他ならない。
　
大好きな人がそばにいてくれるという喜びが日奈子の心を動かした。

したことといえば羊毛フェルトにチャレンジして、お祭りを見てまわったくらいだが、何年振りかわからないくらいの充実感に満たされている。
　
宗一郎が困ったように微笑んだ。

「仕事はどうとでもなるけど。今日はこれ以上日奈子のそばにいられない。約束を守れなくなりそうだ。……夜は帰ることにする」
　
その言葉に日奈子が首を傾げと、宗一郎が咎めるような目になった。
　
その彼に、日奈子はようやく＂手を出さない＂というあの約束を思い出す。

「あ、そっか……」
　
呟くと、宗一郎が目を細める。
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