冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「やり手のチーフって聞いてたけど最悪だよね。でもこれできっと異動だな」
そう言って莉子はニマニマ笑いながらロッカーを開けた。
「それにしてもさすがだね、副社長。てっきり注意するために事務所へ戻ったんだと思ったよ。それがまさか、彼の体調を気遣ってのことだったなんて!」
「そうだね」
日奈子は同意した。
客に対する気配りが一流な人はスタッフの変化にもよく気がつくのだと日奈子は改めて感心した。
逆に一緒に働いていたのに、気づかなかった自分が不甲斐なかった。
キャスターをぶつけるほどの状態なら、先輩の日奈子がチーフに意見してでも帰らせるべきだったのに。
「副社長が来られると、私すっごく混乱しちゃうのよね」
莉子が悩ましげにため息をついた。
「混乱?」
「そう! 厳しい方だから緊張するんだけど、見た目はめちゃくちゃカッコいいからお目にかかれるだけでありがたいような気がするし。従業員のことを一番に考えてくださってるのもわかるから、副社長のもとで働けて幸せ……って思うんだけど。でもやっぱり緊張しちゃうし。ドMかな? 私」
そう言ってカラカラと笑う。
日奈子も笑みを浮かべた。
「間違ったことはおっしゃらないよね」
厳しいことで知られている宗一郎だが、社内での評判は上々だ。
それは彼自身が一流のホテルマンであること、常に現場の事情を把握しいて、理不尽なことを社員に要求しないからである。
老舗ホテルとして名は通っているものの、五年前まではやや客足が伸びなやんでいたホテル九条が再び国内一位に返り咲いたのは、彼の手腕だと言われている。
副社長に就任してまず彼が取り掛かったのは従業員の教育だ。
そう言って莉子はニマニマ笑いながらロッカーを開けた。
「それにしてもさすがだね、副社長。てっきり注意するために事務所へ戻ったんだと思ったよ。それがまさか、彼の体調を気遣ってのことだったなんて!」
「そうだね」
日奈子は同意した。
客に対する気配りが一流な人はスタッフの変化にもよく気がつくのだと日奈子は改めて感心した。
逆に一緒に働いていたのに、気づかなかった自分が不甲斐なかった。
キャスターをぶつけるほどの状態なら、先輩の日奈子がチーフに意見してでも帰らせるべきだったのに。
「副社長が来られると、私すっごく混乱しちゃうのよね」
莉子が悩ましげにため息をついた。
「混乱?」
「そう! 厳しい方だから緊張するんだけど、見た目はめちゃくちゃカッコいいからお目にかかれるだけでありがたいような気がするし。従業員のことを一番に考えてくださってるのもわかるから、副社長のもとで働けて幸せ……って思うんだけど。でもやっぱり緊張しちゃうし。ドMかな? 私」
そう言ってカラカラと笑う。
日奈子も笑みを浮かべた。
「間違ったことはおっしゃらないよね」
厳しいことで知られている宗一郎だが、社内での評判は上々だ。
それは彼自身が一流のホテルマンであること、常に現場の事情を把握しいて、理不尽なことを社員に要求しないからである。
老舗ホテルとして名は通っているものの、五年前まではやや客足が伸びなやんでいたホテル九条が再び国内一位に返り咲いたのは、彼の手腕だと言われている。
副社長に就任してまず彼が取り掛かったのは従業員の教育だ。