冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「美味しかったよ。日奈子、料理上達したんだな、ひとり暮らしちゃんとできてるみたいで安心したよ」

「上達ってただのナポリタンじゃない」
 
大袈裟なことを言う宗一郎がおかしかった。
 
日奈子が夕食に作ったのは、本当になんの工夫もないナポリタンスパゲッティだ。ただ野菜とハムとスパゲッティを炒めてケチャップに絡めただけ。

料理とも言えないような気がする。

しかも野菜を入れる順番を間違えたからにんじんが生焼けでごりごりとしていた。上達したといえるかどうかも微妙だった。

「いや、美味かったよ。働きながらひとり暮らしてるのに、えらいじゃないか」
 
そんなことまで言う宗一郎に、日奈子はさすがに呆れてしまう。いくらなんでも大袈裟だ。
 
その彼に、日奈子は昼間の出来事を思い出して呟いた。

「思い出した。宗くんは、私へのジャッジが甘いんだった」

 宗一郎が首を傾げた。

「ジャッジ?」

「昼間もそうだったじゃない。あのオカメインコ、上手だったとか言って……。昔から宗くんは工作でも料理でもなんでも『上手、上手』って言ってくれるから気をつけないといけないよってお母さんにも言われてたんだ」

「気をつける?」

「そう。手作りお菓子でもなんでも宗くん褒めてくれるじゃない? それは嬉しいけど、信用しすぎると、困ったことになるよって」

「どう困るんだ?」
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