グリーンピアト物語り ~光と愛~

「話を順に説明しましょう。ハイルドン男爵の息子であるニールスは、かつてガレッティアの下で学んでいたのです。しかし、成金となり医者になったニールスは、医師免許を取得しても不真面目で、金を払っては責任を逃れてばかりいました。そんな折、北グリーンピアトから呼び出されたガレッティアと共に手術を行うことになりました。プライドが高いニールスは自ら執刀すると主張し、ガレッティアには譲らなかったのです。ガレッティアはニールスが失敗することを予見していましたが、権力を振るってニールスの言うことを聞かなかったのです。結果として手術は失敗し、ニールスはその責任をガレッティアに押し付け、患者から請求された莫大な慰謝料をガレッティアに支払うよう命じました。その金額は、患者が要求した額を遥かに超えていました。ガレッティアは全財産を投じても支払いきれない額でした。そんな時、ニールスは政略結婚を提案したのです…」

 イーシスは頭が真っ白になりながら、ゆっくりと思い出していました…。


 三年前のことである。父ガレッティアは手術に失敗し、患者から莫大な慰謝料を請求された。そのため、居住していた屋敷を売却し、全財産を処分しても不足していた。その時、母フェディアは病気で倒れ、治療費がかさんでいた。そんな折、ニールスが現れ、ガレッティアの負債を肩代わりすると申し出た。ただし、条件として娘ウィンディアとの結婚を要求した。

 ウィンディアは事故による顔と体の大火傷で、結婚どころではなく、医師として働いても好奇の目に晒されていた。ガレッティアは娘を犠牲にすることを拒否したが、ウィンディア自身がニールスの提案を受け入れた。

 政略結婚としてニールスと結婚したウィンディアは、なぜ自分と結婚したいと思ったのか理解できなかった。しかし、ニールスは「あなたを心から愛しています」と言い、優しさを装って近づいてきた。ウィンディアはニールスの本心を見抜いていたが、両親のために結婚を受け入れるしかなかった。


結婚当初は優しかったニールスも、徐々に家に帰らなくなり、ついにはウィンディアに改名するよう命じた。
「ウィンディアなんて名前はお前には似合わない!醜いお前はイーシスと名乗るべきだ!」
と言い放ち、彼女の名前を無理やりイーシスに変えさせた。
 ウィンディアがイーシスに改名させられてからはニールスはさらに乱暴になった。屋敷の掃除は全てイーシスにさせて奴隷のように扱うようになった。食事の用意をしていても気にいらないと全てひっくり返して外食に出かけてしまう事も多かった。父のハイルドンは体調を崩してばかりでニールスがやる事に口を出せない状態になってしまい寝たきり状態だった。そんなハイルドンの世話もいーしずに任せっきりでニールスは毎晩豪遊を続け、とっかえひっかえ女性を家に連れ込んで夜な夜な喘ぎ声を響かせていた。酷い時は女性とみだらな行為をしている最中にイーシスを呼びつけてワインを持ってこい! と言って脱いだ服をかたずけることまでさせていた。
「そんな醜いお前なんか抱けるわけないだろう! 」と暴言を浴びせて他の女で満足するしかないと言っていたニールス。
 イージスはそんなニールスの暴言にずっと耐えていた。

 
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