グリーンピアト物語り ~光と愛~
「…ずっと…表に出ることは許されないと思いながら生きてきました。…その中で、唯一の支えはサフィーネが元気でいることだけでした…。あの地獄のような結婚生活がいつか終わるとは、思ってもみませんでした…」
「はい、十部承知しております。すぐに答えを出してほしとは思っていません。今は目の前の手術に集中して頂きたいと思っています。ただ、サフィーネが貴女に会いたいと言ったときは時間を作って下さい」
「…はい…」
 
 急な展開により、イーシスは頭が混乱し、答えを見つけることができなかった。
 彼女は今、手術に関することを優先して考えることを望んでいた。

「サフィーネ。お母さんは今、大事な手術があるから。それが終わるまで、待っててくれるか? 」
「うん…」

 素直に聞き分けるサフィーネ。

「お母さん、これをあげる」

 手作りでキラキラと輝く指輪。
 優しいピンク色の輝きがイーシスのイメージにぴったりだ。

「これ、僕が作ったんだ。お母さんにプレゼントしたくて」
「…ありがとうございます…」

 指輪を受け取ったイーシスは、来たときよりもずっと穏やかな目をしていた。




 話を終えたイーシスを家まで送ることにしたアディールは、サフィーネにだけ先に城に帰るよう運転手に伝えた。

 帝国ホテルからタクシーで約10分の距離にある、高級住宅地が並ぶ華やかな町にイーシスの住むオートロック付きの高級マンションがある。

「申し訳ありません、わざわざ送っていただきありがとうございます」
「女性を送るのは男性の務めですから、気になさらないでください」
「それでは、お別れします」

 そっと会釈を交わして、イーシスはマンションに入っていった。

 イーシスがマンションに入るのを確認した後、アディールはタクシーで城に帰った。

 
< 12 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop