グリーンピアト物語り ~光と愛~

 そして、ルキアスの手術日が近づいてきた。

 手術前日に入院する予定だったが、ルキアスは前日では不安だと言い2日前に入院することになった。
 手術前日は軽い検査を受け、リラックスして過ごすようにとのことだった。

 王室専用の最上階にある特別室は、
 高級リゾートホテルのスイートルームのように広々としており、窓からは常夏の海が一望できる。
 ベッドは広々としたキングサイズで、面会用のソファーも柔らかく、冷蔵庫やクローゼットも完備されている。

 
執事のブッドルがルキアスの身の回りを整理してくれた。

「ブッドル、これからは自分でやりますから、大丈夫ですよ」
「手術が終わって退院するまでは、私がそばでお世話をさせていただきます」
「いえ、本当に大丈夫です。他にも仕事があるでしょうし、私のことは気にしないでください」

ブッドルは一息ついて、ルキアスを見つめた。

「皇子様、どうか、そうやって距離を置くのはやめてください。私は皇子様専属の執事です。遠慮なく、何でもお申し付けください」
「ありがとう…ございます…」
 少し苦しそうに答えるルキアス。

「皇子様、私は長年この城で仕えており、国王様の悩みにも力になってきました。そして常に守秘義務を守ってきました。どうか、もっと私を信頼していただけませんか?」
「何をおっしゃるんですか。もちろん、信頼していますよ…」
 冷たい視線を送るルキアス。

「…皇子様、申し訳ありません。半年前に、皇子様のお部屋でスケッチブックを見てしまったことがあります」

 驚きに打たれつつも、ルキアスは表情に出さぬよう努め、平静を装った。

「5年前、その船の中で、皇子様は今までにないほど輝いていました。いつも「僕なんていなくなればいい」とおっしゃっていた皇子様が、とても元気そうで、私は心から喜びました。放っておくべきだとは思いましたが、親心からその理由を知りたくなり、夜中にこっそりと皇子様が素敵な女性と一緒にいるのを見てしまいました」

 本当に見られていたのか…。
 恥ずかしさを隠すため、ルキアスは顔をそっと背けた。

「その女性があれほど素晴らしかったのなら、皇子様が心を動かされるのも無理はありません。私も心を奪われました。事故が起きた時、皇子様が必死で探していた気持ちがよくわかります…」

 ルキアスは諦めの息をつきながら、深く息を吸った。
< 13 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop