グリーンピアト物語り ~光と愛~

「見られていたとは…でも、その人は…」
「生きていらっしゃると思いますよ。」
 自信をもって言い切るブッドルに、ルキアスは驚きの表情を向けた。
「何故そう思うのですか? 」
「皇子様がこれほどまでに想われている方です。神様がお二人を引き離すはずがありません。」
「…本当にそう思ってくれているんですか?」
「私はいつも皇子様の味方ですから。」
 味方か…
 そういえば、ブッドルはあの船に一緒に乗っていた。
 ずっと隠していたのかな?

「有難うブッドル。…あの人の為にも、僕はもう一度光を取り戻したいと思っています」
「大丈夫です。何も心配しないで下さい」
「ありがとう。これで安心して手術を受けられます。」

 コンコン。

「失礼します。」

 フェアンヌが入ってきた。

「皇子様、明日は軽い検査だけです。手術は後日ですので、ご安心ください。」
「フェアンヌ先生、ですね。こちらこそよろしくお願いします。」

 見えない目でフェアンヌをじっと見るルキアス。

「イーシス先生はいらっしゃらないんですか?」
「はい、イーシスは外来を担当しておりますので、私一人で参りました。」
「そうですか。では、外来が終わったら、僕のところに来ていただけますか?イーシス先生にも挨拶をしたいので。」
「残念ですが、イーシスは今日は遅くなりますので、お伺いは難しいですね。」

 ん?避けてる?
 そう感じたルキアスは、少し不機嫌そうに。

「わかりました。それでは、結構です。」
「申し訳ありません。」

 納得いかない様子のルキアス。

「それでは、今夜はゆっくりお休みください。」
「はい、ありがとうございます。」

 フェアンヌが去った後、ルキアスは小さくため息をついた。



 消灯時間が来て、ブッドルは城に戻った。
 ルキアスは少し眠ったが、すぐに目を覚ました。

 ゆっくりと起き上がり、床頭台に手を伸ばして、そこにある美しいダイヤのネックレスを取った。
 ネックレスを握りしめ、ベッドを出て病室を出た。


 時刻は23時を回ろうとしていた。

 夜になると、看護師も医師も少なくなり、誰もいない病棟の廊下を歩いた。
 目が見えないルキアスだが、ネックレスを握りしめながら、周りが見えるかのように歩いていた。
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