グリーンピアト物語り ~光と愛~
 青いスーツを身にまとい、落ち着いた紺色のネクタイを締めています。
 黒い革靴を履き、歩く姿は非常にしなやかで、まるでモデルのようです。
 このような外見のため、グリーンピアトの令嬢たちから求婚が舞い込むようです。
 
 付き添っているのは、長年城で仕える執事ブッドルです。65歳を超えているが、見た目は初老でありながらも若々しく、武術に長けており、ボディーガードとしても兵士に劣らないと評されています。黒いスーツを着ていても、しっかりとした体格が伺えます。顔立ちは優しい紳士そのものですが、不審者を察知すると、その目つきは鋭く変わります。

 


 後部座席のドアを開けてルキアスを車に乗せるブッドル。そして車は走り出した。
 
 
 ルキアスは焦点が定まらない目で一点を凝視していた。その隣にはブッドルが座っている。

 実際、ルキアスは視力を失っている。その原因は、大学生の時に友人を守るために階段から落ちたとされている。視力の問題が始まったのは5年前で、原因が不明のため、グリーンピアトの医師たちでは対処できなかった。そのため、北グリーンピアトにいる著名な脳外科医の手術を受けるために出発したが、連絡船が爆発事故に遭い、北グリーンピアトへは到着できず、最終的に視力を完全に失ったという。

 しかし、約半年前に国立病院に評判の良い脳外科医が赴任したと聞き、話を聞いてみることにし、今日はそのために訪れる。
黒く、バスほどの大きさはないが、広々として乗り心地の良さそうな王室専用車。運転席の後ろには仕切りがあり、後部座席が見えないように設計されている。
 

 柔らかい並びのシートがあり、その後ろには円形のテーブルが設置されており、リビングのような快適な空間が広がっている。
小型の冷蔵庫もあり、飲み物やスナックが用意されている。
 ルキアスは並びのシートに腰掛け、じっと一点を見つめて、何も話そうとはしない…。

車で揺られながらルキアスは心の中である女性を思い出していた。
 目が見え亡くなったルキアスが唯一見える女ウィンディアという女性。
 
 5年前希絶望しかなかったルキアスに希望の光を与えてくれたウィンディア。
 綺麗なブロンドの髪に優しい紫の瞳の持ち主でルキアスが初めて心から愛を感じた女性だった。彼女は北グリーンピアトの出身でグリーンピアトに医師になる為の勉強で来ていて故郷へ帰るところだと話していた。ルキアスも北に行く途中で有名の脳外科に手術を受けるための目的があった。
 彼女に手術してもらえたら最高だろうなぁ…そんな思いを膨らませていたルキアス。

 だが、そんなルキアスの気持ちは無残にも打ち砕かれてしまった。

 あの…残酷な爆破事故で…。

 



 車でお城から約10分走ると、大きな建物が並ぶ風景が広がっている。

一見どこにでもあるような白い外壁の5階建てのビルが立ち並び、広大な敷地を持つ国立病院がある。
隣接する大学からは医学生たちが行き来している。

国立病院の院長はフェンヌという名の男性医師である。
50歳後半で、妻と3人の子供に恵まれており、主に脳外科を担当しているが、他の病棟でも助けを提供することがあり、多岐にわたる業務をこなしている。
がっしりとした体格に長身、深い顔立ちと知的な眼鏡が医師としての威厳を感じさせるが、話し方は非常に丁寧で優しく、患者からの人気も高い。
 
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