グリーンピアト物語り ~光と愛~
驚くべきことに、さっきまであったはずのひどい火傷と深い傷跡が消えてしまっている。今は、透き通るような白い肌の手になっている…。
「これは…どういうこと?」
驚いたイーシスの目には、わずかに涙が浮かんでいた。
ルキアスはフェアンヌに連れられて病院の玄関に到着した。
玄関前には迎えの車が停まっていた。
「フェアンヌ先生、もう一つお願いしてもよろしいでしょうか?」
車に乗る前、ルキアスはフェアンヌに尋ねた。
「何でしょう?」
「僕の手術をイーシス先生にお願いできないでしょうか? 」
「それはなぜですか? 」
「フェアンヌ先生もご存知の通り、実際にはイーシス先生の方が腕が良いからです」
ああ…。
言い当てられ、フェアンヌは黙り込んでしまった。
「最初はイーシス先生にお願いしていたと思いますが、イーシス先生は断りました。「この右手では無理です」と…」
嘘だ! 何も話していないのに、どうしてそんなことがわかるんだ?
フェアンヌは驚き、呆然とした。
確かにルキアスの言う通り、一度はイーシスに手術を依頼した。
しかし、イーシスは「この右手では無理です。皇子様の命がかかっているとも言えますので」と断った。
イーシスは北グリーンピアトで名医として知られている。
正直に言って、自分よりも腕が上だと認めている。
「もう心配無用です。イーシス先生の右手は回復しましたから」
「は、はい…」
どういうことだろう? 何も話していないのに、全てを見透かしているようだ…。
それに、来た時よりもずっと元気に見える。
もしかすると、イーシスと皇子様はどこかで会っているのかもしれない。
ルキアスを見送るフェアンヌは、そんなことを考えていた。