グリーンピアト物語り ~光と愛~
しかし、その日から2年が経過した。
ルキアスは視力の低下に悩まされ、国立病院では対応できる医師がおらず、北グリーンピアトの総合病院に脳外科の専門医がいるとのことで、そこへ紹介されることになった。
ぼんやりとしか見えない中、ルキアスは絶望とわずかな希望を抱いて北グリーンピアトへと旅立った。
しかし、誰もが予想だにしなかったのは、この旅立ちが大事故に巻き込まれることになるということだった。
ドーン!
大きな爆発音とともに、沈むことのないと言われていた北グリーンピアト行きの連絡船が爆発事故で沈没した。
助かったのは金持ちだけで、一般の乗客は全員事故に巻き込まれ、救助が間に合わず死亡したと報じられた。
金持ちは救助ボートで助けられ、たまたま通りかかった西グリーンピアトの連絡船に救助された。
この船に乗っていたルキアスは無事救助されたが、北グリーンピアトへ行くことはできず、ぼんやりと見えていた視力も完全に失い失明してしまった。
視力を失ってから3年後。
有能な外科医が現れ、フェアンヌから手術を受けるようにとの連絡が入った。
ルキアスは無気力な状態で、全てを諦めていた。
北グリーンピアトへの希望を抱いていたが、爆発事故に巻き込まれ希望を断たれた。
もはや何も見るべきではないと神が言っているのだろうと思っていた。
年頃のルキアスには何度も縁談が持ちかけられたが、彼はすべて断っていた。
「こんな自分では幸せにできない」
と言って。
しかし、王室に嫁ぐ名誉を求める女性もいた。
特に貴族階級の令嬢は、妃になるためにあの手この手でルキアスに近づこうとしていた。
中には、ルキアスの盲目を利用して体の関係を強要しようとする女性もいたが、サフィーネが気をつけるようにと警告してくれたおかげでそれを避けることができた。
縁談を断るルキアスに対し、王妃ユーリスは別の理由があるのではないかと感じていた。
しかし、何度訪ねてもルキアスは何も語ろうとしなかった。
そんな絶望の中でルキアスを支えていたのは小さな子供サフィーネだった。
そしてフェアンヌから「有能な脳外科医が来てくれました。手術を受けて下さい」と連絡を受けたルキアスは、迷いもあったがサフィーネに背中を押されてとりあえず話を聞く気になり病院へと向かった。
話だけ聞こうと思っていたルキアスだが、助手の女医の話を聞くとスーッと光が差してきたような気がして表情が明るくなり前向きになれたのだ。