オイスターガール

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次の日ももちろんいじめはなかった。
 
 学食の時間、美雪ちゃんと中華丼を食べる。
 
 今まであったいじめの話をしようと思ったがなかなか伝えることが出来る気分にはならない。
 
 すると美雪ちゃんが
「最近うちのクラスでいじめがあったんだよね」
「優ちゃんは大丈夫だよね?」
 と私が言いたいことを言い出しやすい空気を作ってくれた。
 
 私は心の緊張が少し緩み
 
 実は……と紙に書いて全てを話した。
 
 すると美雪ちゃんは
「なんで私に話してくれなかったの?私たちの関係ってそんな薄かったっけ?」
 と怒り顔で言ってきた。
 
 私はすぐさま謝罪と理由を紙に書いて述べようとしたがその前に
「結果的にいじめはなくなってよかったけど、助けてくれた男の子にありがとうを言えてないということね」
「そういう時は菓子折り一つ持ってありがとうって一言伝えるだけでいいんだよ!」
 
 私はそうかと感心した。
 
 手作りクッキーを作って、それと一緒にありがとうを言えばいいのか。

 美雪ちゃんはやっぱり頼りになる。
 
 私はわかった!ありがとうと紙に書きその後は謝罪と弁明の時間で昼食を終わった。
 
 自分の教室に戻り自分の席についた。
 
 椅子の上に黄色い画鋲はもうない。
 
 席に座った後回りを見渡し一条薫を探すと見つけた。
 
 一人でイヤホンをし音楽を聴きながら勉強していた。
 
 さすが秀才は普通の生徒とは違うと思った。
 
 その日から定期的に彼を観察してみることにした。
 
 今日も休み時間も勉強して友達と喋っているところを見とことがない。

 昼食も一人で食べているみたいだった。
 
 その次の日も次の日も彼は同じだった。
 
 彼は私とは違う種類の1匹狼なのだろう。
 
 例えるなら、一人でなんでも出来てしまうタイプの人種だと思った。
 
 少し話しかけづらいと思ったが明日ありがとうを伝える為にクッキーを作ろうと決めた。
 
 その日家に帰った後にクッキーの材料をスーパーへ買いにいく、材料コーナーで薄力粉、砂糖、バターを買う。

 卵は家に沢山あるから大丈夫として味は何にしようかプレーンだと味気ないなと思った私は長く悩んだ末にチョコチップクッキーにすることにした。
 
 クッキーを焼くなんて小学校のバレンタイン以来だな。
 
 今は6月、全然時期が違うと思った。
 
 クッキーを焼いている最中母から
「誰にプレゼントするの?」
「好きな人出来た?」
 と聞かれたが違うと言って、話しかけてくる言葉を流した。
 
 私はお菓子作りは休みの日によくやっているので得意な方だ。
 
 1時間ほどで完成した。
 
 明日クッキーを渡して、ありがとうを言おうとそう決めその日は眠りに落ちた。
 
 
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