狐火
はっと眼が覚めると、
ミメラ《硬芋》とラリス《大根》のユシル《味噌汁》と
パーキー《酢豚》の良い匂いが漂っている。
勢いよく起き上がった。
しかし誰もいない静かな部屋に、コトコトと味噌汁が沸騰している音が響く。
「父様…?母様…?姉様…?兄様…?
ねぇ…何処にいるの…?ねぇ!!」
「どうしたのっ!!!!」
姉様の声が響いた。
眼を開けると姉様が立った私の体を揺すっている。
「姉様…?」
やはりこの部屋にもユシルとパーキーの匂いが充満している。
「ねぇ…姉様」
「なぁに?沙雪…何で震えてるの?」
「姉様…あれはなぁに?」
沙雪が指差したのは、天井。
私にははっきりと見えていた。
獣に似た………………人間?
解らないけど、怖くて。
すると父様が、
「伏せろ!」
私は小さくて届かなかったけど、
兄様の頬が微かに切れた。
姉様は私をギュッと掴んで
家族全員天井を睨みつけた。