狐火
「姉様痛いよ…あれは何?」
「しっ!静かにして…気配を消すのよ……」
私はとっさに息を殺した。
そのナニカは、やがて眼が光って家の中から消え去っていった。
「ねぇ母様…父様…兄様…姉様…?あれは何?」
皆口を閉じ、何も喋ろうとしない。
姉様が私を外へ連れ出した。
見事に橙色の夕焼けが光っている。
「ねぇ沙雪?沙雪はこの世界が好き?」
「うん…姉様とか兄様、母様、父様、殿がいるから。」
「沙雪は、殿様が好き?」
「うん…大好き皆と同じくらい。」
「そう…」
姉様はそれ以来、光っている夕焼けを見つめ、
頬に一筋の涙を流した。
それは、絵画のようにキレイで、
なんとも言えない淋しさがあった。
「姉さ…」
私は問いただそうとしたけど、
聞いてはいけない気がして…
躊躇した。
いつもは優しいはずの夕焼けが、今日は切なく感じられた。