猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)
「っぁああーーいっ」
間合いを詰めた相手が、軸足を踏み込んで虎太郎の腹部へと猿臂(順突の中段突き)を仕掛けて来た。
それを一歩後ろに下がりダッキングし(ギリギリでかわす)、着地した後ろ足を軸足にしてそのまま横蹴上を繰り出した。
「っぅぁあああああああーいっ!!」
副審4人が旗を上げ、主審が手を上げた。
中央のラインに戻り、判定を待つ。
「赤、上段蹴り、一本」
右の手刀が上がり、虎太くんの方に手刀が振り下ろされた。
スコアボードに3pが追加され、4対0となる。
残り時間21秒。
『あと少しだよ』
祈る想いで見守る。
ここで隙を見せたら、一気にポイントが詰まってしまうし、逃げ勝とうと攻撃態勢を放棄すれば、ペナルティが加算される。
最後まで頑張って。
ビービーと試合終了を知らせる音が鳴る。
スコアボートの制限時間が0を示した。
中央のラインに戻りながら、乱れた道着を正す彼。
「赤、勝ち」
主審の手刀が虎太くんの方に振り上げられた。
試合中は静まり返っていたのに、どこからともなく拍手がわき起こる。
「おめでとうございます」
「ありがとうございますっ」
周りにいる保護者の方々が、彼のご両親に祝いの言葉を贈る。
初戦、おめでとう。
場外に出た彼が最後に一礼し、こちらへと手を振って寄こした。
いい笑顔だ。
カメラでその雄姿を何枚も撮る。
これは病みつきになりそうだ。
保護者の中にはビデオカメラを回してる人もいて、後で動画を共有するらしい。
私も虎太くんだけでなく、他の白修館の部員達を撮って、良く撮れた写真をプレゼントしたいな。
雫は、見守る側の高揚感のようなものを感じていた。