猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)
たった1歳。
されど1歳。
この1年の差は大きい。
「私だって、毎日会いたいよ」
「じゃあ、うちに引っ越して来ていいっすよ!うちからの方が大学近いし」
「っっ」
「ね?」
いやいやいや、そんな可愛く『ね?』と言われても。
さすがに『うん』とは言えないから。
「この敬語口調を何とかしてくれたら」
「マジで?!」
「引っ越しはしないよ?」
「は?」
「さすがにそれは無理だから」
あからさまに気落ちしてるのが分かる。
そんなにも思ってくれるだけで、十分すぎるのに。
「両家の親の許可がでたら、泊まりに来てあげるから」
「マジっすか?!」
「だから、その口調」
「んんんんんっ」
ぎゅっと口を結んで、うんうんと何度も頷く彼。
ホントに可愛いったらありゃしない。
年下彼氏を持つと、こういうメリットがあるんだね。
「ホントにもう帰るよ?」
「送ります」
「大丈夫だよ、まだ結構明るいし」
「いや、俺が一緒にいたいんで」
「っ…」
デニムジャケットを羽織り、ショルダーバッグを肩から掛ける。
スッと立ち上がった彼は開けっぱなしの窓を閉め、スマホと財布をポケットにしまった。
玄関でハイカットのスニーカーを履いていると。
「ただいま~、……出掛けんの?」
「家まで送って来る」
「あっそ。……こんばんは」
「は、初めまして、……香椎 雫です」
「知ってます」
「え?」
「俺も空手やってるんで」
「……あぁ」
「お気をつけて」
「……あ、はい」
スタスタと2階へ上がって行く弟さん。
初めて見たけど、虎太くんに似てる。
ワイルド感が抜けたというか、マイルドになった感じの虎太くんだ。
アルバムがあったのは小学校くらいまでの写真だったから、ちょっとびっくりしてしまった。