猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)

翌日。
午前中だけ自宅道場で稽古をした彼が、昼過ぎに迎えに来た。

「プール日和っすね」
「本当にプールに行くの?」

私の質問ににかっと真夏の太陽みたいな眩しい笑顔で返事した彼。
私の手から荷物を受取り、踵を返した。


春先に買った水着。
昨日言われて箪笥から出してみたけど。
いざ、彼の前で着るとなると、緊張する。



どこかの市民プールとか、郊外の穴場的スポットかと思ったら……。

「借りたって、……貸し切りってこと??」
「貸し切り……そうなるのか?」

到着したのは白修館高校。
都内でも有数の私立高校で、運動に秀でている生徒が全国から集まるような北棟。
その北棟にある屋内プールだった。

「水泳部は明日から遠征らしくて、今日は午前中だけだったんすよ」
「……」
「だから、ちょーっとだけわがまま言って借りました」

悪戯っぽく笑う彼は、施錠されてるドアを開けた。

「じゃあ、着替えが終わったらまたここで」
「……うん」

颯爽と男子更衣室へと向かう彼。
イメージしてたプールと、全然違うんだけど。

別に、プールデートに期待してたわけじゃないけど。
彼に初めて見せるのが、高校の屋内プールって……。

スポーツ特進科に入学してたら、体育の授業で水泳があったのかな?
そんなことが脳裏を過った。


女子更衣室で水着に着替える。
一応、さっちゃんとちーちゃんが選んでくれたから、それなりに女性らしいデザインだとは思うけど。
着こなせるかは、別問題だ。

壁に設置してある姿見で最終チェックする。

「……変じゃないかな…?」

ここまで来て『やっぱり無理!』は、さすがに気が引けるよね。
仕方ない、約束は約束だもんね。

大判のタオルでさりげなく前を隠しながら、更衣室を後にした。

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