猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)
「ブランクあるのに、やっぱめちゃくちゃ早いっすね」
「虎太くんに完敗だけどね」
「現役で、しかも男の俺が負けたら、洒落になんないっすよ」
本当に3年ぶりに泳ぎ切ったから、どっと乳酸が溜まったみたい。
腕が重いし、浮くために足を掻くのも辛い。
水深5メートル強のプールのデメリット。
足が着かないから、浮くか掴まるかしないとならないということ。
「ごめんっ、ちょっと」
隣りのレーンから潜ってやって来た彼に抱きついた。
「……全力で泳いだから、もう足が動かないっ」
いきなり抱きついたものだから、驚いた顔をしてる。
ごめんね、重いよね。
「ちょっと触るっすよ」
「へ……キャッ」
プールサイドに左手をかけ、右手で私のお尻部分を支えた彼が、グイっと力を入れた。
すると、ひょいと軽々と私の体がプールサイドに上がれるまでに浮上した。
「すごっ……」
上半身どころか、膝の辺りまで水面から出ていて、あとは簡単に上がれた。
「すげぇ、いい眺め」
「へ?……やだっ!」
彼の視線の先にお尻を突き出すみたいにしてしまった。
もう……勘弁してよ。
お互いにプールサイドに上がって、ちょっと休憩。
持参した飲み物で水分補給をする。
「本気出さなかったでしょ」
「……何で分かるんすか?」
「分かるよそれくらい」
本気を出さなくても勝てるくらい、体力差があるということ。
それくらい、彼の体は仕上がってるのだろう。
空手だけ得意なわけじゃなくて。
体幹がいいと、ある程度の運動は何でもこなせる。
それは私が一番よく分かってるから。
「お願い事って、何?」