猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)
(虎太郎視点)

「お邪魔しまーす」

10月下旬の土曜日。
普段ならバイトが入っている雫が、珍しく『デートしよう』と誘って来た。

バイト先のスーパーが21時までの営業だから、いつもはバイト終わりを待って。
その後に彼女を自宅まで送り届けるのが、デートみたいなものだけど。

オリンピック効果というのか。
メダルを取ったことで、あちこちの高校から練習試合の申し出が殺到して。
このところ、毎週末は練習試合で埋まってる状態。

そんな中。
久しぶりに練習試合がない土日が出来て、それを彼女に話したからなのか。

バイトが入っていたはずなのに、休みを代わって貰ったようで。
久しぶりに午前中から彼女と一緒にいる。

映画を観て、ご飯をして、買い物をして。
本当に恋人らしい時間が、あっという間に過ぎてゆく。

『夕ご飯はうちで食べる?何か食べたいものを作ってあげるよ』

雫の家でご飯することも、作って貰うこともあったけれど。
久しぶりだからか、嬉しくて緊張する。

それに、俺が食べたいものなんて決まってる。
雫以外に欲しいものなんてない。

「味付けは、トマトソース系でも大丈夫?」
「好き嫌いないから、オールOK」

ロールキャベツを作ってくれるという。
うちはコンソメ味が殆どだけれど、雫の家はトマトソース系らしい。

「部屋でDVD観てていいよ?ゲームしててもいいし」
「DVDやゲームより、こっちの方が目の保養」
「なっ…」

俺のために料理してくれるだけでも嬉しいけれど。
見慣れぬ白いエプロン姿は、ヤバいくらい萌える。

手際よく仕上げられていく料理を目の当たりにし、改めて実感する。
この女性(ひと)に、できないことはないんだろうな、と。
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