猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)

「味は大丈夫?」
「どれも旨い」
「ホント?」
「嘘言ってどうする」

彼女はここぞという時に肝が据わっているが、普段は自信のなさが目立つ。
何をするにも控えめというか。
周りに気を遣い過ぎることも多い。

そんな彼女だから惹かれたというのもある。
俺の知っている彼女は、いつだって堂々としていて、自信に満ち溢れてるような人だったから。

だから、ギャップというか。
一体どこでスイッチが入るのか、それが新鮮で。

今では、その変わる瞬間を見るのが一番の楽しみ。
いや、幸せといった方が正しいか。

見ていて飽きない。

たった1歳。
されど1歳。

決して埋まることのない歳の差が、覆る瞬間でもあるから。



「ねぇ、本当に座っててくれればいいんだよ?」
「これくらい俺にもできるから」

お腹いっぱい食事をし、空いた食器を片付ける。
たまにはこういうのも必要だと思ったからだ。

彼女だから、女性だから、当たり前なのではなくて。
美味しい料理を作って貰った礼くらいは、ちゃんと態度で示したい。

「ッ?!!」

皿洗いをしていたら、突然背後から抱きつかれた。

「今日、……泊まってく?」
「は?」
「……泊まってっても……いいよ」
「……雫のお母さんは?」
「……暫く、帰って来ないよ」
「は?……どういうこと?」

無意識にごくりと生唾を飲み込む。
予想もしない展開で、いまいち状況が呑み込めない。

「おじいちゃんがまたぎっくり腰やっちゃって、暫く世話しに行ってるから」
「……」
「明日も部活休みでしょ?……だから、泊まっていっても…」

それとこれとは話が別じゃね?
いや、合ってんのか??

今まで『泊まりにおいで』とは何度となく俺から言って来たけど。
『泊まっていいよ』だなんて、言われるとは思ってもみなくて。

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