猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)


「雫先輩」
「……こ、こんにちは」

午後1時20分。
約束の時間まで、まだ10分もあるのに。

「先輩、早いっすね」
「ちーちゃんたちと近くでお昼ご飯食べたから」
「そうだったんですね。暑い中、待たせてすみません」
「えっ……大丈夫だよ」

ぺこりと頭を下げた彼。
黒いTシャツにデニムというシンプルな格好。
凄いっ、目のやり場に困る。

首から肩にかけての僧帽筋。
Tシャツの布地に隠れているはずなのに、物凄く盛り上がってる三角筋と大胸筋。
極めつけは、袖からの存在感を成す上腕二頭筋。

自分も毎日のように鍛錬していたから、それなりについたこともあるけれど。
次元が違い過ぎる。

周りにいる女子、いや男性ですら彼に肉体美に見惚れている。

「どこか行きたい所とか、ありますか?」
「……特には」
「じゃあ、俺が行きたい所に連れてってもいいっすかね?」
「……はい」

デートなんて生まれて初めてなんだから、私にリードなんてものができるはずがない。
そもそも、男の子と二人きりで出掛けることすら初めてなんだから、会話ですらどうしていいのか分からないのに。

『雫、ファイト!!』
『頑張れ~』

少し離れている所からちーちゃんたちが手を振りながら、改札方面へと行ってしまった。
彼が来るのを見届けたら帰るから、と。

「先輩の私服、めっちゃかわいいっすね」
「かっ……わぃい?」
「はい、めちゃくちゃかわいいっす。それに、このお団子、すっげぇ似合ってます」
「っ……」

ポンポンと優しくお団子にタッチする彼。

ストレートロングの髪をアイロンでふんわりと巻いて、ちーちゃんが可愛くゆるめのお団子にしてくれたもの。
自分でもトライしたことがあるが、やり慣れない私は、見事に火傷した。
火傷くらいで諦めず、もっと練習すればよかったのかな。

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