猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)


「えっ……ちょっと、津田くんっ」
「はい」
「もしかして、ここに入るの?」
「はい」

にかっと白い歯を見せる彼。
目の前に聳え立つのは、世界最大のアニメショップ、池袋本店だ。

「先輩、『プリンセスの扉』やってますよね?」
「へ……?」
「実は俺もやってるんです」
「えぇぇえええっ?!」

外国人の観光客も多くいる中、入口で発狂してしまった。

「とりあえず、暑いんで中に入りましょうか」

外気温30度近くて、彼の額には汗が滲んでいる。

先を歩く彼を追いかけるように店内へと。
スーッと冷気が肌を撫でる。

二次元のイケメンが大好物だけれど、池袋は1人では来づらくて来たことがない。
ネットや大手の書店で入手している雫にとって、ここは聖地巡礼と言っていいほど、神の領域だ。

「ゲームだけじゃなくて、漫画やDVDとかも観ます?」
「観ます!!」
「ッ?!……プッ」
「あっ……」

食い気味に答えてしまった。
だって、見るもの全てが癒しの世界なんだもん。

「今の、めちゃくちゃかわいかったっす」
「っっ…」
「俺、弟がいるんすけど、いつもすっげぇ冷めた目で見られてるんで。なんか、この世界観が通じる人と話せること自体が奇跡っす」

私もだ。
ちーちゃんとさっちゃんは理解を示してくれているけれど、他の人には絶対に言えない。
仲のいい女の子たちですら言えないのに、こんな風に男の子と共通の趣味があるだなんて、信じられない。

あっ、もしかして、だからなの?
彼が私に声をかけて来たのは。

「あの、津田くん」
「はい?」

私の声掛けに足を止め、振り返った彼。
視線が泳ぐ私を、優しく覗き込むような感じで近づいて来た。

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