猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)

「彼が今してる組手ってのは打撃を与えると逆に反則になるルールで、紙一重で止めないとならないの。突きだとポイントは低いけど、確実に加算できる仕組みで、回し蹴りを試合で決める人はかなり少ない」
「……そうなんだ。だから、突きってのをする人が多いんだね」

イメージしていた空手とは少し違ったのかもしれない。
けれど突きでさえ、正確に技を決めるのは難しい。

相手は技を交わすし、間合いが外れれば決まらない。
自分では決めたつもりでも、副審が判定しなければ、ポイントにはならないのだから。

「ぅぁあーいッ!」

N校の男子が中段突き(1p)を決めて来た。
交わしたように見えたが、有効(1p)が入ってしまった。

3年ぶりの緊張感。
高校に入学と同時にすっぱりと格闘技から引退した雫にとって、久しぶりの臨場感に鼓動が早まる。

再び攻撃態勢に入った虎太郎。
小刻みにステップを踏みながら、時折左足で一歩踏み込むふりを見せ、相手の間合いを読んでいるようだ。

「ぅぁあーいッ」
「っぁああああいっ!!」

再び対戦相手が中段突きを仕掛けて来たのをダッキングし、虎太郎の上段蹴り(3p)が見事に決まった。
これで一気に逆転だ。
(ダッキングとは、相手の攻撃をギリギリでかわす行為のこと)

「今の決まったの?」
「うん、上段蹴りが決まったから3p入って、2p差で逆転した」
「凄いじゃん!」

部員たちの声援で二人の会話が掻き消されるほど、物凄い迫力がある。

『怪我だけはしないで…』
勝敗よりも怪我をしないかが心配になる雫。
一瞬の隙が大怪我に繋がるからだ。


その後も確実に技を決め、11対3で虎太郎が勝利した。

**

「津田くん、おめでとう」
「先輩の上段蹴りには遠く及ばないっすけどね」
「……へ…?」

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