猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)

あまりにも真剣な顔で言うから、本気にしそうになったじゃない。

「やだっ、一瞬自分が女の子だと勘違いしちゃったよ」
「は?……女の子じゃないですか」
「違うよ」
「え?」
「女の子はこんなにも大きくないし、もっとふわふわでキラキラしてて可愛い生き物だから」
「……意味わかんねぇ」
「だから、ちーちゃんとかさっちゃんみたいな、あーいう子たちのことを『女の子』と言うんだよ」
「それ、前にも言ってましたけど、そんなにも重要っすか?」
「……ん、すっごく重要なことだよ」
「先輩、俺の昔みてぇ」
「へ?」

ずいっと近づいた彼。
覆い被さるみたいに目の前に立ちはだかって、大きな手を少し上げた。

あっ……、私のために日陰を作ってくれてるようだ。
太陽光線を遮るみたいに手を翳してくれている。

「俺は体が小さいのがコンプレックスだったけど、先輩は今の状態がコンプレックスなんすね」
「っ……」
「この間のデートの時にも言いましたけど、俺には十分小さくて可愛いっすよ」
「普通の女の子は、もっとちっちゃくて可愛い生き物なんだってばっ」
「別に俺は他の人はどうでもいいっす。カッコいいとかかわいいとか、そんなんで先輩を好きになったんじゃないし、空手が強かったから好きになったんでもないっす」
「へ?」
「何て言えばいいんだ?……優しさ?思いやりみたいな、目に見えない部分を全部持ってかれたんで」
「っ……」
「俺と一つしか違わないのに、住んでる世界が違うっつーか。とにかく、存在自体が俺の女神なんで」

にかっと白い歯を見せながら、照れ笑いする彼。
ストレートすぎる彼の気持ちに、素直に応えれそうにない。

「気持ちはありがたいけど、……やっぱりごめんね」

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