猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)

「いいっすよ、今は」
「……」
「受験の大変さは分かってるんで、すぐに答えを出せなくても文句言いませんよ」
「っ……」
「けど、一緒に昼飯くらいはいいっすよね?あと半年しかないんで」

空手精神?
攻撃と防御が一体になってる感じ。

男子に好かれることも、仲良くなることもなかったから。
本当にどうしていいのか分からない。

『ごめんね』と断ったのに通じてないというか、聞く気がないというか。
有効と技ありでポイントを稼いだはずなのに、大技で簡単に逆転されてしまう感じだ。

こういう時は、どうすればいいんだっけ?
やられる前に間合いを読んで、技を繰り出すしかない。

「じゃあ、ちーちゃんとさっちゃんが、いいって言ったらね」
「もちろんっす!っしゃぁあッ、毎日先輩に会える!」
「っっ…」

もう全然ダメじゃない。
技を決めにいったのに、ダッキングされて、見事に一本取れたやつだ。

そんな嬉しそうな顔見たら、ホントに困るよ。
こんな私でも、ちゃんと女の子扱いされてるだなんて勘違いしちゃう。

「雫?」
「あっ…」
「お友達?」
「……同じ高校の人」

母親が買い物をして来たようで、両手にスーパーの袋を手にしている。

「こんにちは、初めまして、津田と言います」

突然の母の出現にもかかわらず、彼はいつもと変わらず堂々としていて。
母親がびっくりするくらい、深々と綺麗な一礼をした。

彼ほどのイケメンなら、こんな風に誰かの親と鉢合わせすることもあっただろう。
動揺してない様子から、場慣れしてるのだと感じる。

男子に誘われ、試合を見に行くことも。
自宅まで送り届けて貰うことも初めての私とは、住む世界が違う。

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