猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)
⑧信じて貰えるまで、何度でも
(虎太郎視点)

「虎太、今日も向こうで飯食うの?」
「おぅ、悪いな」
「別に俺はいいけど、そんなにしつこくしてて、嫌われないか?」
「……どうだろうな」

親友の朋希と4限目の体育を受けるために体育館へと向かう。

毎日の日課とも思えるほど、南棟のテラスに通っている虎太郎。
恋愛は駆け引きが重要だというが、虎太郎に駆け引きなど無理な話。

端正な顔立ちに、男でも惚れ惚れするほどの肉体。
最近では負けなしというほど実力もついて来て、南棟でも結構知名度が出てきた。

そんな虎太郎が、一途に雫のもとに通っている。
卒業まで半年というタイムリミットがあるというのもあるが、当の本人はもっと単純な脳細胞の持ち主。

ただ単に、毎日『会いたい』だたそれだけだ。

「試合見に来てた天野先輩って人、可愛らしい人だったな」
「あぁ~そうだな。少しマーペースでのんびりしてるけど、意外にも行動力があるとこもあって、結構面白い人だよ」
「へぇ~」
「あ、けど、彼氏持ちだから、変な気起こすなよ?」
「起こさねーよ。俺、好きな子いるし」
「は?マジ?!どんな子?どこの子?どこで知り合ったんだよっ」
「お前、圧すげぇな」
「いいから教えろよ」

朋希と恋愛の話をする日が来るなんて、思いもしなかった。

見た目とは違い、結構ナイーブな性格の虎太郎は、あまり人に関心を寄せたことがない。
幼い頃のコンプレックスのせいもあり、どこか壁を作ってしまうような、建前の関係でしか接することができずにいた。

そんな虎太郎に、幼馴染以外で心を唯一開いたのが朋希だ。

< 52 / 154 >

この作品をシェア

pagetop