猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)
②サイン下さいっ!

「ちとせ、雫、おはよ」
「おはよう、さっちゃん」
「今日は余裕じゃん」

翌朝、7時53分着の電車が来るのを待っている雫とちとせの前に咲良がやって来た。
今朝も反対のホーム(下り)から、いつもの男子高生三人組がこちらを見ている。

始業式の翌日は、一斉テストがある白修館。
夏休み中の宿題でもある、分厚い課題集から出題される試験だ。
だから、きちんと課題集をこなしていれば点数は取れるのだけれど、とにかく範囲が広い。
五教科から出題され、平均点は毎年65点ほどだ。

「雫はテスト対策、完璧だよね~」
「他にすること無かったしね」
「休み明け一発目にテストとか、ホント鬼畜だよね」

リア充の二人は、彼氏とのデートで夏休み中も忙しかったのだろう。
さっちゃんはバイトもしているから、課題をこなすだけでも大変そう。

私たちが通う白修館高校は、文武両道の名門私立高校である。

校舎はアルファベットの『H』のような形をしていて、スポーツ特進科(プロアスリートを目指す選抜された生徒が通う科)は北校舎。
南校舎は勉強に優れている生徒が在籍していて、理系コース、文系コース、総合特進コースと普通科が3つに分かれている。

雫や咲良、ちとせが通うのは、最も偏差値の高い総合特進コース。
大学進学率ほぼ100%で、東京6大学は勿論のこと、有名国立大学や医学部などに進学する生徒が殆ど。

口では『あまり勉強してない』などと言っても、基礎学力自体が高く、世間ではセレブ学校だなんて言われている。
その特進コースで、雫は常にトップの成績をおさめている。


恋がダメなら、せめて勉強だけでも…。

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