猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)

12月25日クリスマス。
あっという間にこの日を迎えてしまった。

昨日は終業式ということもあって、学校は半日だったけれど。
空手部はびっちりと19時まで稽古があった。
雫は通っている医塾の授業があって、お互いにイブとはかけ離れたような日を過ごした。

そして……。

「雫~」
「今手が離せないから、開けていいよ~」

部屋のドアがノックされ、さっちゃんに教わったようにヘアアイロンで髪を巻いている雫は、声だけドアに向けた。

「あら、髪を巻いてたの?」
「さっちゃんに教わったんだけど、なかなか上手くいかなくて」
「じゃあ、コツだけ教えてあげるわね」
「ホントっ?」

保険外交員の母親は、身だしなみには気を遣っている。
他の外交員が化粧バッチリで毎日着飾っている中、私の母親は若い頃から変わらずナチュラルメイクを心掛けているらしく、スキンケアには拘りがあるらしい。

「髪はいきなり巻こうとしても、雫みたいな直毛だと幾ら巻いてもすぐに取れちゃうから、最初に巻髪専用の整髪料つけたら、巻きたい髪を一掬い取って、アイロンで軽く流し当てして髪を温めてから、そしたら巻きたい様に巻く」
「……ホントだ!ちゃんと巻けてるっ」
「毛量は多い方じゃないんだから、そんなに時間はかからないはずよ?」
「ありがとっ」

一人娘の雫を、ドレッサーの鏡越しに見つめ、娘の成長を嬉しく思う母・香奈(かな)
幼い頃から身の回りのことも勉強も、何でも自分一人で何とかしようと頑張る子だったから、手のかからない子ではあった。
唯一、おねだりのように親を頼ったのが習い事だったのだ。

「それで、何か、用があったんじゃないの?」
「あっ、そうだった!」

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