猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)

「あのね、津田くん」
「はい」
「その、……ピアスホールを開けるってのは口実で、ホントはね…」
「……ん?」

子供部屋には珍しいカウチソファ。
そこに、彼に座って貰うことすらもすっかり忘れて。
部屋に大柄の男女が立ち尽くしてる状態で、視線が絡む。

一拍どころか、十拍くらい呼吸があく。
緊張して次の言葉が出て来ない。

「先輩、とりあえず、座りましょうか」
「っ……ん」

自分の部屋なのに、彼に手を引かれソファに座る。
部屋の大きさに合わせて、両親が選んだソファ。
だから、子供部屋にしては大きすぎるそれが、今は有難いというか。
一人分あけて、腰を下ろす。

「今日、クリスマスなんで」
「へ?」
「そういう意味合いっすよね?」
「……?」

パニック状態の頭では、彼の言葉の意味を考える余裕が無い。
クリスマスが何だって?

「クリスマスに自宅に呼んでくれたってことはそういうことで。わざわざ自宅に呼んでまで、俺を振るとかじゃないっすよね?」
「ッ?!」

振るも何も……。
まだ付き合ってもいないのに。
……もしかして、津田くんの中では、うちらはもうそういう関係ってこと?

「えっ、何すか、その顔」
「へ?」
「本気で振るつもりなんすか?」

彼の言葉に驚いただけなのに、それを『何で分かったの?』的に取った彼。
そういう意味合いじゃないのに。

もう、何て言ったら伝わるの?

「す、好きなのっ!」
「…へ?」
「津田くんのこと、すごく好きなのっ」
「っっ」
「だけど、今は受験が最優先だから……ちゃんと付き合うのは、合格してからにしたくて。我が儘言ってるのは分かってる。だけど、これだけは譲れなくてっ」

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