猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)


卒業式の卒業生代表として答辞を述べる。
何度も自宅で練習して、すらすらと言えたはずなのに。

白修館に通った日々を思い出したら、涙腺が緩みだした。

緊張とは違う。
溢れ出すような、何とも言えない感極まった感情。

約1時間半の卒業式を終え、各クラスで最後の時間を過ごす。

担任の源 亜沙子先生は、クリーム地に牡丹柄の二尺袖に藤色の袴を合わせた出で立ち。
高等部3年生を担当する女性教諭は全員袴姿だ。
これも毎年恒例らしい。

最後のHRが行われ、通知表を渡しながら、一人一人に源先生がメッセージを送る。

「香椎さん、本当に3年間よく頑張りました。先生はあなたのたゆまぬ努力をずっと見て来ました。その努力がいつの日か、大輪を咲かせることでしょう。春からは大人の女性として、春爛漫な日々を謳歌して下さいね。ご卒業、おめでとうございます」
「ありがとうございます」



担任とクラスメイトの子たちと写真や動画を撮って、教室での最後の時間を惜しむ。
特に総合特進コースは男女別クラスで、3年間担任と生徒が同じクラスだから、一体感がある。

「亜沙子せんせーい、今度ご飯行こう!」
「いいわよ~」
「ホントっ?!」
「卒業したら、個人的なやり取りもできるようになるから、先生の連絡先メモする?」
「するする!!」
「私も!」

卒業するまでは、教師と生徒との個人的なやり取りは禁止されていて、学校公認の学生用アプリを使用して連絡の通達等がなされていた。
だから、先生の携帯番号もアドレスも知らされていなかったのだ。

源先生は教師生活で初めて受け持ったクラスらしくて、私たちと同じように丸々3年間の時間(担任として)を過ごして来た。
だから、先生にとっても私たちは特別らしい。

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