猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)

「先輩、パスポート持ってますか?」
「パスポート?」
「はい」
「持ってるには持ってるけど、残りの期限があまりないかも」
「じゃあ確認して、無かったら更新しておいて下さい」
「え?」
「高校選抜で優勝して、先輩をオリンピックに連れて行くんで」
「えぇぇぇ~っ?!」
「そんなに驚くことですか?」
「そりゃあ、驚くでしょっ」

オリンピックに出場できるかどうかは、今の空手の成績からして、クリアできそうなのは分かるけど。
だからといって、私も一緒にとは話が全くの別物だよ。

「オリンピックの出場枠が取れたら、すぐに航空券と試合会場近くのホテルを予約しないとダメらしくて」
「……ん」
「半年切ってるんで、既に価格が上がり始めてるって親父が言ってました」
「……そうなんだぁ」
「直前だと、1泊50万とかそれ以上にもなるみたいで」
「えぇぇ?!!」
「だから、できるだけ早い段階で確保しとかなきゃならないらしいんすよ」
「……なるほどね」

頭では理解できるんだけど、どうしても腑に落ちないというか。
理解しがたいことが……。

「でもさ、私が行く理由がある?」
「はっ?……何言ってんすか、大ありっすよっ!」
「え?」
「先輩が応援してくれたら、絶対メダル取れるんで!」
「……」
「だから、今月末の高校選抜にも応援に来て下さいね?」
「……」

いやいや。
私が応援したからといって、勝てるとか、メダルが取れるとか。
それって、物凄く責任重大なんだけど……。

「ちなみに、高校選抜って、どこでするの?」
「岡山です」
「……」
「あっ、新幹線のチケットとホテルは心配しなくていいっすよ。母親がもう手配したみたいなんで」
「は?」

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