猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)


新人戦の前々日。
16時過ぎに虎太郎から『ちょっと出て来れる?』というメールが届く。

明日の午前中の新幹線で岡山入りするため、今日は早めに部活が終わったらしい。

上野駅の改札口で待ち合わせ。
雫は久しぶりのデートに心を弾ませていた。

「………虎太くんっ」

制服姿の彼は、改札口近くの壁に寄り掛かってスマホを弄っていた。
それがあまりにもカッコよくて。
思わず、見惚れてしまった。

「久しぶりの生脚だ」
「やだっ、変な言い方しないでよっ」

改札口付近にいるサラリーマンの視線が一瞬で向けられた。

久しぶりのデートということもあって、ショートパンツにしたのだ。

長身で脚の長い雫がデニムのショーパンにTシャツ、ロングカーディガンを合わせた恰好をすると、モデルかと思うほど似合っている。

「飯の前に、寄りたいとこがあるんすけど」
「ん、もちろんいいよ」

躊躇なく握られる手。
大きくてごつごつとした指が、雫の指先を絡めとる。

「めっちゃいい匂い」
「やだっ、クンクン嗅がないでよっ」
「俺以外の誰に嗅がせる気っすか」
「……そういう問題じゃないから」

一瞬考えてしまった。
嗅がせる、嗅がせないの問題じゃなくて。
人前で嗅ぐ行為自体が問題なんだってば。

3日前にちーちゃんとさっちゃんと買い物に行った。
大学に着ていく服を買うために行ったけれど、一番欲しかったのは『香水』。

今まで勉強一筋だった雫は、メイクも服も殆ど興味が無く。
親友2人が選んでくれた服を着まわしていた。

そんな雫が、いつもいい香りを纏っていた2人に、自分に合う香りを選んで貰ったのだ。
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