Good day ! 2
第十六章 パイロット夫婦の誕生
「かんぱーい!」
大和が海外フライトの日、恵真は仕事上がりに伊沢やこずえと三人で食事に来ていた。
「おめでとう!伊沢くん、こずえちゃん」
「ありがとう。恵真の方こそ、おめでとう!その婚約指輪、すっごくきれいね」
「ふふ、ありがとう」
照れたように恵真は微笑む。
「なんか俺達、一気に幸せになったな」
伊沢がしみじみ言う。
「いい夫婦の日。こずえが誕生日で俺はこずえとつき合い始めて。恵真は佐倉さんと婚約、野中さんと彩乃さんも結婚披露宴。俺達毎年さ、11月22日を感慨深く思い出すんだろうな、この先も」
「そうだね」
恵真も頷く。
「はあー、まさかこんな結果になるなんてね。20歳の自分に教えたら、びっくりたまげるだろうな」
「なんだよ?それ。俺とつき合うのが不満みたいだな」
こずえの言葉に、伊沢がむくれる。
「不満じゃないけど、驚きの展開なんだもん。まあ、あの頃はパイロットになる為に必死で、誰とつき合うかなんて考える余裕もなかったけどね」
確かに、と恵真も笑う。
「俺さ、今でも時々スマホに保存してあるこの写真、見返すんだ。ほら」
そう言って伊沢は二人に画像を見せる。
それは、ファーストソロフライトを終えた三人が、制服姿で笑っている写真だった。
「うわ、懐かしい!」
「ほんと!顔があどけないね」
恵真とこずえは、笑顔で写真を見つめる。
「あの頃、本当にパイロットとしてやっていけるか不安だった自分に教えてあげたい。パイロット、凄くいい仕事だよって」
恵真がそう言うとこずえも頷く。
「そうだよね。あの時の苦労が報われて、何倍も楽しく空を飛べるから、大丈夫って言ってあげたい」
そんな二人の横で、伊沢も真面目に続ける。
「それに最高の恋人も出来るぞって。パイロット目指して良かったな」
はあ?と、女子二人が眉を寄せる。
「もう、何その不純な発想。伊沢さ、なんかキャラ変わったよね」
「だって俺にとっては大事な事だもん。二人と知り合えて、こずえと一緒になれた事が」
思わずうつむいたこずえの顔を、恵真が覗き込む。
「ふふ、こずえちゃん、照れてるの?」
「ち、違うわよ!」
「なんか伊沢くんもかっこよくキャラ変したけど、こずえちゃんも可愛くなったよね」
「ちょっと!恵真こそキャラ変わったわよ。何?その余裕ぶった発言。既にマダムみたいな貫禄」
マダムー?!と恵真が声を上げる。
「やだ!何それ?」
まあまあ、と伊沢が苦笑いする。
「とにかく俺達の前途は明るいよな。俺、頑張って同期の誰よりも早く機長に昇格してみせるよ」
「え、凄い!伊沢くん」
「まあな。いつまでもこずえを頼ってばかりじゃ情けない。俺も頼られる男にならないとな」
こずえは頬を染めて言葉を失っている。
「良かったね!こずえちゃん」
「もう、恵真。またそうやって…」
「だって嬉しいんだもん。私達三人が、今こうやって幸せにパイロットとして空を飛べてる事が」
「うん、確かにね」
「よし、じゃあもう一回乾杯するか。俺達の明るい未来に…」
かんぱーい!と、三人は笑顔でグラスを上げる。
恵真は心の中で、20歳の頃の自分に語りかけた。
数々の不運に見舞われて、自信を失くしていた自分。
果たしてパイロットになれるのか、不安で仕方なかった日々。
(大丈夫。あなたは幸せなパイロットになれる。大好きな人に巡り会って、たくさんの愛で包んでもらえる。パイロットとしても力強く導いてくれる素敵な人に会えたあなたは、最高に幸せになれるよ)
恵真はあの頃の自分に微笑みかけた。
大和が海外フライトの日、恵真は仕事上がりに伊沢やこずえと三人で食事に来ていた。
「おめでとう!伊沢くん、こずえちゃん」
「ありがとう。恵真の方こそ、おめでとう!その婚約指輪、すっごくきれいね」
「ふふ、ありがとう」
照れたように恵真は微笑む。
「なんか俺達、一気に幸せになったな」
伊沢がしみじみ言う。
「いい夫婦の日。こずえが誕生日で俺はこずえとつき合い始めて。恵真は佐倉さんと婚約、野中さんと彩乃さんも結婚披露宴。俺達毎年さ、11月22日を感慨深く思い出すんだろうな、この先も」
「そうだね」
恵真も頷く。
「はあー、まさかこんな結果になるなんてね。20歳の自分に教えたら、びっくりたまげるだろうな」
「なんだよ?それ。俺とつき合うのが不満みたいだな」
こずえの言葉に、伊沢がむくれる。
「不満じゃないけど、驚きの展開なんだもん。まあ、あの頃はパイロットになる為に必死で、誰とつき合うかなんて考える余裕もなかったけどね」
確かに、と恵真も笑う。
「俺さ、今でも時々スマホに保存してあるこの写真、見返すんだ。ほら」
そう言って伊沢は二人に画像を見せる。
それは、ファーストソロフライトを終えた三人が、制服姿で笑っている写真だった。
「うわ、懐かしい!」
「ほんと!顔があどけないね」
恵真とこずえは、笑顔で写真を見つめる。
「あの頃、本当にパイロットとしてやっていけるか不安だった自分に教えてあげたい。パイロット、凄くいい仕事だよって」
恵真がそう言うとこずえも頷く。
「そうだよね。あの時の苦労が報われて、何倍も楽しく空を飛べるから、大丈夫って言ってあげたい」
そんな二人の横で、伊沢も真面目に続ける。
「それに最高の恋人も出来るぞって。パイロット目指して良かったな」
はあ?と、女子二人が眉を寄せる。
「もう、何その不純な発想。伊沢さ、なんかキャラ変わったよね」
「だって俺にとっては大事な事だもん。二人と知り合えて、こずえと一緒になれた事が」
思わずうつむいたこずえの顔を、恵真が覗き込む。
「ふふ、こずえちゃん、照れてるの?」
「ち、違うわよ!」
「なんか伊沢くんもかっこよくキャラ変したけど、こずえちゃんも可愛くなったよね」
「ちょっと!恵真こそキャラ変わったわよ。何?その余裕ぶった発言。既にマダムみたいな貫禄」
マダムー?!と恵真が声を上げる。
「やだ!何それ?」
まあまあ、と伊沢が苦笑いする。
「とにかく俺達の前途は明るいよな。俺、頑張って同期の誰よりも早く機長に昇格してみせるよ」
「え、凄い!伊沢くん」
「まあな。いつまでもこずえを頼ってばかりじゃ情けない。俺も頼られる男にならないとな」
こずえは頬を染めて言葉を失っている。
「良かったね!こずえちゃん」
「もう、恵真。またそうやって…」
「だって嬉しいんだもん。私達三人が、今こうやって幸せにパイロットとして空を飛べてる事が」
「うん、確かにね」
「よし、じゃあもう一回乾杯するか。俺達の明るい未来に…」
かんぱーい!と、三人は笑顔でグラスを上げる。
恵真は心の中で、20歳の頃の自分に語りかけた。
数々の不運に見舞われて、自信を失くしていた自分。
果たしてパイロットになれるのか、不安で仕方なかった日々。
(大丈夫。あなたは幸せなパイロットになれる。大好きな人に巡り会って、たくさんの愛で包んでもらえる。パイロットとしても力強く導いてくれる素敵な人に会えたあなたは、最高に幸せになれるよ)
恵真はあの頃の自分に微笑みかけた。