Good day ! 2
第一章 二人の生活
「ただい…」
マンションの玄関を開けて奥の部屋に声をかけようとした大和は、話し声に気づいて言葉を止めた。
「出来た!これでどうかな?」
恵真の明るい声がする。
誰か来ているのか?と思ったが、玄関には見慣れた恵真のパンプスしかない。
大和は静かに靴を脱ぎ、音を立てないようにリビングへと続くドアをそっと開けた。
ソファに座った恵真が、ローテーブルに置いたスマートフォンに向かって話をしている。
「うーん、変じゃないかな?」
『大丈夫!バッチリよ』
恵真が画面を覗き込みながら聞くと、スピーカーから相手の声がした。
どうやら、テレビ電話をしているらしい。
「じゃあ明日、これでやってみるね。ありがとう!こずえちゃん」
『いいえー。頑張ってね!』
「うん!また報告する」
『はいよー。あ、伊沢にもよろしくね』
「分かった。またねー」
通話を終えた恵真が、バッグを置く大和の気配に気づいて振り返った。
「大和さん!お帰りなさい」
「ただいま、恵真」
そう言って微笑んだが、次の瞬間、ん?と真顔になる。
「恵真、その格好…」
「あ、これ?ふふ、家で制服着てるなんて変ですよね」
「いや、それより…」
ソファから立ち上がり近づいて来た恵真は、パイロットの制服姿だった。
確かに家で着ているのも珍しいが、大和が目を留めたのは、胸元の鮮やかなブルーのスカーフだ。
「それ、どうしたの?」
「ん?あ、大和さんはご存知ないですか?うちの会社の女性パイロットの制服って、ネクタイとは別にスカーフも支給されているんです」
「えっ!そうなのか?」
「はい。ジャケットの襟をめくると、ほら、ここにスカーフを通す所があって、その日の気分でネクタイかスカーフかを選べるんです。ネクタイは男性と同じで1種類ですけど、スカーフは色とか柄、大きさが違うものが4種類もあって。それにジャケットやブラウスも、女性用のは少し、こう…ウエストに沿って絞ったデザインなんです」
制服に手をやりながら説明する恵真に、へえーと大和は感心する。
「女性パイロットのスカーフなんて知らなかった。だって恵真は、いつもネクタイだったし」
「そうなんです。私もスカーフには興味なかったから。他の女性パイロットは、たまに着けている人いますけど、私は今まで一度も。でも明日はスカーフを着けてきてくれって言われて…」
「え、誰に?」
すると恵真は、首をかしげてうつむいた。
唇をほんの少しとがらせて頬を膨らませているその様子は、拗ねている証拠だった。
マンションの玄関を開けて奥の部屋に声をかけようとした大和は、話し声に気づいて言葉を止めた。
「出来た!これでどうかな?」
恵真の明るい声がする。
誰か来ているのか?と思ったが、玄関には見慣れた恵真のパンプスしかない。
大和は静かに靴を脱ぎ、音を立てないようにリビングへと続くドアをそっと開けた。
ソファに座った恵真が、ローテーブルに置いたスマートフォンに向かって話をしている。
「うーん、変じゃないかな?」
『大丈夫!バッチリよ』
恵真が画面を覗き込みながら聞くと、スピーカーから相手の声がした。
どうやら、テレビ電話をしているらしい。
「じゃあ明日、これでやってみるね。ありがとう!こずえちゃん」
『いいえー。頑張ってね!』
「うん!また報告する」
『はいよー。あ、伊沢にもよろしくね』
「分かった。またねー」
通話を終えた恵真が、バッグを置く大和の気配に気づいて振り返った。
「大和さん!お帰りなさい」
「ただいま、恵真」
そう言って微笑んだが、次の瞬間、ん?と真顔になる。
「恵真、その格好…」
「あ、これ?ふふ、家で制服着てるなんて変ですよね」
「いや、それより…」
ソファから立ち上がり近づいて来た恵真は、パイロットの制服姿だった。
確かに家で着ているのも珍しいが、大和が目を留めたのは、胸元の鮮やかなブルーのスカーフだ。
「それ、どうしたの?」
「ん?あ、大和さんはご存知ないですか?うちの会社の女性パイロットの制服って、ネクタイとは別にスカーフも支給されているんです」
「えっ!そうなのか?」
「はい。ジャケットの襟をめくると、ほら、ここにスカーフを通す所があって、その日の気分でネクタイかスカーフかを選べるんです。ネクタイは男性と同じで1種類ですけど、スカーフは色とか柄、大きさが違うものが4種類もあって。それにジャケットやブラウスも、女性用のは少し、こう…ウエストに沿って絞ったデザインなんです」
制服に手をやりながら説明する恵真に、へえーと大和は感心する。
「女性パイロットのスカーフなんて知らなかった。だって恵真は、いつもネクタイだったし」
「そうなんです。私もスカーフには興味なかったから。他の女性パイロットは、たまに着けている人いますけど、私は今まで一度も。でも明日はスカーフを着けてきてくれって言われて…」
「え、誰に?」
すると恵真は、首をかしげてうつむいた。
唇をほんの少しとがらせて頬を膨らませているその様子は、拗ねている証拠だった。