Good day ! 2
「ただいま…」
恵真は誰もいない部屋に呟いて靴を脱ぐ。
今日は乗務はなく、インタビューのあとデスクワークと自習をしてから帰宅した。
大和は国内線往復で、そろそろ帰ってくるはずだった。
キッチンで夕食の支度をしながら、恵真はインタビューの事を思い返す。
(倉科さんと一緒なんて、聞いてなかったのに…)
てっきり川原から質問されて、それに自分が一人で答える様子を撮影するものだとばかり思っていた。
(それになんだか、終始倉科さんに振り回されて終わった感じがする)
どんな動画になったのだろう。
あの内容で大丈夫なのだろうか?と、倉科のセリフを思い出す。
(会社としてあれでいいのかしら?あー、色々恥ずかしい)
ボンヤリしていて、うっかりトマトを切る手を滑らせてしまった。
「痛っ!」
痛みを感じて思わず顔をしかめた時、「ただいま」と玄関から大和の声が聞こえてきた。
「お帰りなさい」と返事をするが、その場を動けずに切った左手の人差し指をぎゅっと押さえていると、大和がパタパタと駆け寄って来た。
「恵真?どうした?!」
「ごめんなさい。手が滑って…」
血が滲む指を慌てて隠そうとすると、大和にパッと手を掴まれる。
「見せて」
大和はすぐさま恵真の人差し指を確認すると、少し上に掲げながらティッシュを傷口に当て、グッと握りしめた。
男性の力で押さえられると、かなり圧迫される。
「キツイと思うけど、我慢して」
「はい」
しばらくそうしてからそっとティッシュを外すと、出血は止まっていた。
「良かった。これならすぐ治りそうだ。痛みは?」
「いえ、もうほとんどありません」
頷いた大和は救急箱を持ってくると、傷口を消毒してから絆創膏を貼る。
「傷も浅いし、このままきれいに治ると思う」
安心したように微笑んだが、恵真を椅子に座らせると、大和はひざまずいて恵真を見上げ真剣に話し出した。
「恵真。パイロットは健康が第一だ。体調だけでなく、怪我にも注意しなければいけない」
「はい。すみませんでした」
「今回は軽く済んだから乗務にも差し支えないと思うけど、もう少し酷かったら操縦桿は握れない。乗務停止になる」
恵真は深刻な顔で頷く。
「いい?日常生活でも、ひとときもパイロットである事を忘れてはいけないよ」
「はい」
「よし。でも本当に軽く済んで良かった。恵真のきれいな指に傷が残ったら大変だからな」
大和は恵真の頭をクシャッとなでて笑いかけた。
その途端、ホッとした恵真の目から涙がこぼれ落ちる。
「恵真?痛むの?」
「ううん。ごめんなさい、怪我をしてしまって…。本当にすみませんでした」
「謝ることはないよ。ごめん、俺が悪かった。順序を間違えたな。こっちが先だった」
そう言って大和は恵真を抱きしめる。
「食事を作ってくれてありがとう。指、痛かっただろ?ごめんな。もう大丈夫か?」
恵真の心の中が、じわっと温かくなる。
「うん、平気。でももう少しこうしてて?」
「分かった」
大和は恵真の頭をぎゅっと抱き寄せた。
恵真は誰もいない部屋に呟いて靴を脱ぐ。
今日は乗務はなく、インタビューのあとデスクワークと自習をしてから帰宅した。
大和は国内線往復で、そろそろ帰ってくるはずだった。
キッチンで夕食の支度をしながら、恵真はインタビューの事を思い返す。
(倉科さんと一緒なんて、聞いてなかったのに…)
てっきり川原から質問されて、それに自分が一人で答える様子を撮影するものだとばかり思っていた。
(それになんだか、終始倉科さんに振り回されて終わった感じがする)
どんな動画になったのだろう。
あの内容で大丈夫なのだろうか?と、倉科のセリフを思い出す。
(会社としてあれでいいのかしら?あー、色々恥ずかしい)
ボンヤリしていて、うっかりトマトを切る手を滑らせてしまった。
「痛っ!」
痛みを感じて思わず顔をしかめた時、「ただいま」と玄関から大和の声が聞こえてきた。
「お帰りなさい」と返事をするが、その場を動けずに切った左手の人差し指をぎゅっと押さえていると、大和がパタパタと駆け寄って来た。
「恵真?どうした?!」
「ごめんなさい。手が滑って…」
血が滲む指を慌てて隠そうとすると、大和にパッと手を掴まれる。
「見せて」
大和はすぐさま恵真の人差し指を確認すると、少し上に掲げながらティッシュを傷口に当て、グッと握りしめた。
男性の力で押さえられると、かなり圧迫される。
「キツイと思うけど、我慢して」
「はい」
しばらくそうしてからそっとティッシュを外すと、出血は止まっていた。
「良かった。これならすぐ治りそうだ。痛みは?」
「いえ、もうほとんどありません」
頷いた大和は救急箱を持ってくると、傷口を消毒してから絆創膏を貼る。
「傷も浅いし、このままきれいに治ると思う」
安心したように微笑んだが、恵真を椅子に座らせると、大和はひざまずいて恵真を見上げ真剣に話し出した。
「恵真。パイロットは健康が第一だ。体調だけでなく、怪我にも注意しなければいけない」
「はい。すみませんでした」
「今回は軽く済んだから乗務にも差し支えないと思うけど、もう少し酷かったら操縦桿は握れない。乗務停止になる」
恵真は深刻な顔で頷く。
「いい?日常生活でも、ひとときもパイロットである事を忘れてはいけないよ」
「はい」
「よし。でも本当に軽く済んで良かった。恵真のきれいな指に傷が残ったら大変だからな」
大和は恵真の頭をクシャッとなでて笑いかけた。
その途端、ホッとした恵真の目から涙がこぼれ落ちる。
「恵真?痛むの?」
「ううん。ごめんなさい、怪我をしてしまって…。本当にすみませんでした」
「謝ることはないよ。ごめん、俺が悪かった。順序を間違えたな。こっちが先だった」
そう言って大和は恵真を抱きしめる。
「食事を作ってくれてありがとう。指、痛かっただろ?ごめんな。もう大丈夫か?」
恵真の心の中が、じわっと温かくなる。
「うん、平気。でももう少しこうしてて?」
「分かった」
大和は恵真の頭をぎゅっと抱き寄せた。